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Kriega R30 と R25 — 防水バックパックの定番が"定番"たりえる構造的理由

英国発の防水バックパック Kriega R シリーズを構造・素材・使い勝手の面から比較し、選び方の指針を示す。

Kriega R30 と R25 — 防水バックパックの定番が"定番"たりえる構造的理由
Photo by Egor Myznik · Source

なぜ Kriega ばかりが「定番」と呼ばれるのか

バイク用バックパックの選択肢は増えた。大手アパレルからガレージブランドまで、防水を謳う製品は数え切れない。にもかかわらず、英国発の Kriega(クリーガ)が長年にわたり「ライダーズバックパックの決定版」として語られ続けている状況は、単にマーケティングの巧拙では説明しきれない。

Kriega は2000年代初頭にロンドンで創業したとされる比較的若いブランドだ。創業者はモーターサイクルギアのデザインに携わっていた人物で、既存のバックパックが二輪走行時の身体の動きにまったく最適化されていないという問題意識から R シリーズの開発に至ったと公式に説明されている。ここで注目すべきは、Kriega が最初から「バイク専用」として設計された点である。登山用やミリタリー用の流用ではなく、ライディングポジションにおける荷重分散と防水性を最優先に据えた設計思想が製品の骨格になっている。

R シリーズのラインナップは容量ごとに R15、R20、R25、R30 と展開されているが、もっとも比較対象に挙がるのが R25 と R30 だ。日帰りツーリングからロングツーリングの補助バッグまで、用途が重なる容量帯だからである。この二つをどう選ぶかは、単純に「大きいほうが便利」という話では済まない。構造そのものが異なる部分があり、そこを理解しないと買い物としての精度が下がる。

Kriega R30 motorcycle backpack riding Photo: MTA NYC R30 8506 by Mtattrain, via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)

ハーネスシステムという設計の核心

Kriega R シリーズの最大の特徴は、独自の「Quadloc」ハーネスシステムにある。一般的なバックパックは両肩のストラップで荷重を吊り下げる構造だが、Kriega はこれに加えて胸部と腰部の四点で身体に固定する設計を採る。R25 と R30 はいずれもこのハーネスを共有しており、肩甲骨の間にバッグ本体が収まるようにフィッティングされる。

このハーネスの設計意図は明確だ。二輪車の走行中、ライダーの上半身は加減速と旋回によって常に前後左右に荷重変化を受ける。通常のバックパックでは荷物の慣性で重心が振られ、特にブレーキング時に荷物が前方へずれて首や肩に過大な負荷がかかる。Quadloc ハーネスは胸部のバックルと腰回りのベルトで荷重を分散し、バッグが体幹に密着したまま動かないよう設計されている。

技術的に掘り下げると、ハーネスのショルダーストラップは通常のバックパックよりも短く、かつ幅広に設計されている。これは荷物を肩で「吊る」のではなく、背中全体で「背負う」ための構造だ。四輪のレーシングハーネスと発想が近い。肩ストラップの素材には高密度のナイロンウェビングが使われ、荷重がかかっても伸びにくい。ストラップの調整機構も片手で操作できるよう設計されており、グローブをしたままでも締め増しや緩めが可能とされる。

R25 と R30 でハーネスの基本構造は同一だが、R30 はバッグ本体の背面長がやや長い。これにより、身長170cm前後のライダーが背負った場合、R30 のほうが腰寄りに重心が落ちるとされる。一方で前傾姿勢の強いスポーツバイクでは、バッグ下端がシートカウルやリアシートに干渉する場合があり、この点は車種との相性で判断が分かれる部分だ。

motorcycle backpack harness system riding gear Photo by Matthew Stephenson on Unsplash

防水構造の実際 — 止水ジッパーではない理由

Kriega R シリーズが採用する防水方式は、多くのアウトドア系バッグとは根本的に異なる。一般的な防水バッグは止水ジッパー(水密ファスナー)を開口部に用い、ジッパーの歯の噛み合わせと PU コーティングで浸水を防ぐ。しかし止水ジッパーには構造的な弱点がある。繰り返しの開閉で PU コーティングが摩耗し、経年で防水性が劣化する。また、泥や砂がジッパーの歯に噛むとシール性が一気に落ちる。

Kriega はこの問題に対し、「ロールトップ+内部ドライバッグ」という二重構造で回答した。バッグの上部開口はロールトップ式で、3回以上巻き込んでバックルで留める。さらに内部にはウェルデッド(高周波溶着)されたドライバッグが仕込まれており、万が一ロールトップから浸水しても内部の荷物は濡れない設計になっている。

外装素材には1000デニールのコーデュラナイロンが使われている。コーデュラは米インビスタ社(旧デュポン繊維部門)の登録商標で、同デニールの通常ナイロンと比較して耐摩耗性が数倍高いとされる素材だ。1000デニールという番手は、バリスティックナイロン(軍用防弾チョッキ由来)に迫る厚手の部類で、アスファルトとの擦過にもある程度耐える。ただし防水性はコーデュラ自体の特性ではなく、裏面に施された PU コーティングと溶着シームによって確保されている。

R25 と R30 の防水構造に本質的な差はない。ともに同じ素材・同じ溶着工法を採用しており、容量の違いはあくまでバッグ本体の高さとマチの寸法で生まれている。ここが重要な判断材料になる。防水性能に差がないのであれば、選択基準は「容量」「重量」「フィッティング」の三つに絞られるからだ。

📺 関連映像: Kriega R30 R25 waterproof backpack review — YouTube で検索

waterproof motorcycle luggage rain riding Photo by Angry._.Kat on Unsplash

R25 と R30 の容量差が意味するもの

R25 の公称容量は25リットル、R30 は30リットル。差はわずか5リットルだが、この5リットルが実用上どこに効くかを具体的に考える必要がある。

日帰りツーリングの荷物を想定すると、レインウェア上下、ペットボトル1本、財布・スマートフォン、軽食、カメラ(ミラーレス一眼+標準ズーム程度)で概ね10〜15リットルを占める。R25 でもかなり余裕がある。一方で一泊以上のツーリングになると、着替え一式、洗面用具、充電器類が加わり、20リットル前後に膨らむ。ここに土産物や予備の防寒着が入ると R25 では上限に近づく。R30 はこの「一泊+α」の領域で余裕を持たせるための容量設計だと解釈できる。

ただし容量が増えればバッグ自体の重量も増す。R25 の公称重量は約1.2kg、R30 は約1.4kgとされる。差は200g程度だが、長時間のライディングではこの差が首や肩に累積する。特に夏場、汗で肌とハーネスの間の摩擦が増す状況では、軽さは正義だ。

もうひとつの判断軸がある。R30 にはサイドポケットの構成が R25 よりやや充実しており、外部からアクセスできる小物入れの数が多い。高速道路の料金所で ETC 非搭載車がカードや現金を取り出す場面、あるいはコンビニの駐車場でスマートフォンを出し入れする場面で、この外部ポケットの有無は地味に効く。R25 はよりシンプルな構成で、荷室へのアクセスは基本的にロールトップからの一方向になる。

海外の長期使用レビューを複数読むと、R25 を選んだユーザーの満足度が高い傾向が見て取れる。理由として多く挙げられるのは「荷物を厳選する習慣がつく」「バッグが小さいほうが身体との一体感が高い」という点だ。一方で R30 を選んだユーザーは「もう少し大きいバッグを買い足す必要がなくなった」と述べる傾向がある。結局のところ、ツーリングのスタイルと荷物量の自己認識が選択の鍵になる。

Kriega R25 motorcycle touring luggage compact Photo: BMW R25-2 by Jörg Hornfischer, via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0 de)

拡張性と Kriega エコシステムの設計思想

Kriega のバッグ設計を語るうえで見落とせないのが、製品間の互換性——いわば「エコシステム」の存在だ。R シリーズのハーネスには、別売りの US-5 や US-10、US-20 といったドライパックを追加装着するためのアタッチメントポイントが設けられている。つまり R25 を基本にして、荷物が増えた場合は US-10 を左右に追加する、あるいは US-20 をテールバッグとして併用するという拡張が可能になっている。

この設計思想は、バックパック単体の容量で勝負するのではなく、ライダーの荷物量に応じてシステム全体を拡縮させるという発想に基づいている。自動車のルーフキャリアシステムに近い考え方だ。R25 と R30 の容量差で悩むなら、R25 を選んで US-5 を一つ追加するという選択肢も成立する。この場合、合計容量は30リットルに達しつつ、荷物が少ない日は US-5 を外して R25 単体で身軽に走れる。

ドライパックの US シリーズは完全防水のロールトップ式で、単体でもシートバッグやタンクバッグとして使える汎用性がある。素材は R シリーズと同じ1000デニールのコーデュラナイロンで、溶着シームの工法も共通だ。Kriega の製品カタログを俯瞰すると、この素材と工法の統一がブランド全体の品質感を担保しているのが分かる。

価格面では、R25 の日本国内での販売価格は概ね2万円台後半から3万円台前半、R30 は3万円台前半から半ばで推移しているとされる(時期や販売店により変動する)。この価格帯は一般的なバックパックとしては高価だが、バイク専用設計の防水バッグとしては国内外の競合と比較して突出して高いわけではない。ドイターやオルトリーブといったドイツ系アウトドアブランドの防水バックパックが同等かやや安い価格帯にあるが、これらはあくまで自転車やトレッキング向けの設計であり、Quadloc ハーネスのような二輪専用のフィッティング機構は持たない。

📺 関連映像: Kriega US drypack system motorcycle luggage setup — YouTube で検索

motorcycle touring gear packing waterproof bags Photo by Duy Nod on Unsplash

まとめ — R25 か R30 か、その判断の軸

Kriega R シリーズが長年にわたり評価されている理由は、派手な新機能の追加ではなく、防水構造・ハーネス設計・素材選定という基本設計の堅牢さにある。R25 と R30 の選択は、容量5リットルの差をどう捉えるかに尽きる。

日帰りから一泊程度のツーリングが中心で、荷物を絞る意識があるなら R25。宿泊を伴うツーリングが多く、バッグひとつで完結させたいなら R30。そして「普段は軽く、必要なときだけ拡張したい」という志向なら、R25 に US シリーズのドライパックを組み合わせるのがもっとも柔軟な選択になる。

いずれを選んでも、1000デニールコーデュラと溶着シームによる防水性、Quadloc ハーネスによるフィッティングという R シリーズの核は共通だ。数年単位で使い込んだときに差が出るのは、ジッパーや縫製の耐久性よりも、ハーネスと身体の相性——つまり最初のフィッティングで適切にストラップを調整したかどうかだろう。道具は構造を理解して使うと、寿命も満足度も変わる。

Kriega の設計思想やバイク用ラゲッジの選び方をさらに掘り下げたい向きには、『カスタムバーニング』2019年4月号(造形社)のツーリングギア特集が参考になる。バッグ類を含むライディング装備の横断的な比較が掲載されている。また『BikeJIN』2023年5月号(エイ出版社)ではロングツーリングの積載術が特集されており、Kriega を含む複数ブランドのバッグが取り上げられている。


本記事はメーカー公開資料・雑誌バックナンバー・公開報道を編集したものです。公道での違法改造・スピード超過・無保険走行を推奨するものではありません。車両の購入・カスタム・メンテナンスは、必ず正規ディーラーまたは認証整備工場にご相談ください。

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